時計塔の鬼



大好きな、心から愛する存在。

彼らが居てくれるだけで、私の中の不安は、霧が晴れて鮮やかな青空が広がるように、一気に霧散してしまう。



――ピンポーン…

夕食を食べ終わり、片付けもさっさと終えて、家族団欒でゆっくりと寛いでいた時。

玄関のインターホンの音がして、私は苦笑した。

こんな時間に訪ねてくる相手なんて、限られている。

秀もまた苦笑いをしていたけれど、子供たちは小首をかしげていた。



「……一樹、来たの誰だろうね?」


「さぁ……」


「でもさ、やっぱりおばちゃんじゃない?」


「……二葉、それ、アイツの前で言っちゃダメだからな」


「えー、なんで?」



そんな子供たちと秀との話声を背中で聞きながら、私は玄関へとスリッパをペタペタと鳴らしながら向かう。

そして、フォレストグリーン色のドアをゆっくりと開けた。

すると、すぐに感じたのは、衝撃と息苦しさと――。



「夕枝ーっ! ちょっと遊びに来たわよぉ~!」


「……歩美、苦じぃ……うっ」


「ちょ、お母さん、夕枝おばちゃんが苦しそうっ!」



……夕枝おばちゃんと呼ばれるのは、年齢的に仕方のないことだとしても、いささか悲しい。

月日の流れというものは残酷だ。

私は酸素の回らない頭で、そんなのんきなことを考えていた。

現実逃避、とも言えるけれど。