「お母さんはお父さんにいつプロポーズされたの?」



そんなマセた子供のセリフに、一瞬唖然としてしまった。

けれど、すぐに気を取り直して、質問して来た子を膝に乗せて頭を撫でてやりながら口を開く。



「お母さんがお父さんにプロポーズされたのは、久しぶりに会った時の、帰りの車を降りる直前よ」


「わぁ~、ってことは、お父さんって車の中でプロポーズしたの?」


「父さんってばやる~!」


「ねぇねぇ母さん、それって俺たちの生まれる何年前なの?」



好奇心いっぱいです、と同じように書かれた顔をする子供たちに向って、私はそっと口元に人差し指を持って行く仕草をした。

ウィンクも付けて、おそらくは不満を言われるであろう答えをあげる。



「それはね、秘密。あなたたちがもっと大きくなったら、教えてあげるわ」


『えぇ~!』



予想通りの不満げな声に、私は苦笑を漏らす。

リビングでつけっぱなしにされていたテレビの音声が、団欒のBGMとして、穏やかに流れる。

突然間の抜けたようなインターホンの音がして、子供たちはスクッと立ち上がった。



「父さんおかえりなさいー!」


「あのねあのね、今お母さんにきいてたんだけど」


「父さんが母さんに車の中でプロポーズしたって本当!?」