時計塔の鬼

―Side Yue―…


シュウの言葉にホッとしてしまった自分が、少しだけ恥ずかしかった。

けれど、安心感の方がはるかに大きくて、私はシュウに肩を抱かれたままでいた。



「……そりゃあ大変だったなぁ」


「だろー? 好きな女がどこにいるのか、とか分かっていながら、十一年耐え忍ぶんだぜ?」


「俺、ちょっとやり遂げる自信がなぁ~」


「無いだろ。俺を尊敬しろ。一応お前の先輩なんだぜ? 一応、俺もあの学校のOBだし」


「あ、そか。ちょうど入れ替わりなんだな」


「そうそう。お前物わかりよくて助かるわ。でも、女のためならそれくらい耐え忍べよ~。やろーと思ったらできるもんだし」


「う……、ま、とりあえずは今を大事にするさ」


「それがイチバンいいだろうな。オシアワセニ」


「もちろん、幸せになってやるんだよぉーだっ! ね、慎ちゃん!」



男二人でトントン話が進んでいくな、と思っていたら、案の定、歩美が割り込んだ。

もちろん、手にはジョッキを握り締めて。

けれど、嫌な割り込みじゃない歩美のそれは、坂田君にもシュウにも、そして私にも苦笑を誘った。



「歩美、また酔ってるわね?」


「うう、よってひゃいほん!」


「完璧酔ってるクセに……」


「ほら、歩美水飲め、水」



坂田君に解放される歩美を見ていると、ああやっぱり歩美は酔ってても可愛いな、と思ってしまった。

けれど、ジェラシーは湧かない。

それはたぶん、シュウがありのままの私を受け入れてくれる、とわかっているからだ。