時計塔の鬼


医者から絶対安静と言い聞かされ、一人になった部屋で、俺は与えられた情報から考えをまとめた。

つまり、俺は時計塔から出た途端、自分の生きていた体に戻った、ということなんだろう。

それこそ、時間を超えて。

……ゲンの言っていた、『帰るくらいのチカラは貸してやる』というのは、このことだったんだろうか。

俺はゲンから借りたチカラで時間を戻ってきたから、当然、俺のチカラは多少残っていたはずだ。

……考えられるのは、ゲンから借りたチカラの残りと、記憶を取り戻した俺のチカラの残りとが混ざってしまい、俺は人間になり、そうして元の時代に飛んできてしまったんだろう。

魂の旅、とでもいったところか。

考えれば考えるほど、なんとも荒唐無稽で信じられないような話だ。



だが……、俺の中にある、夕枝との思い出も、夕枝への思いも、夢なんかではない。

間違いなく、本物だ。






「けど、俺、これからどうしよう……」



そう、問題は残っている。

元の時代に戻った、ということは、俺は今十七歳で、夕枝は今十四歳。

なんと、彼女はまだ中学生だ。



「これって、ロリコンになったり……しないよな?」



誰にというわけでなく、そう呟いた。

若干の苦笑いが浮かんでしまうのは、まあ仕方のないことだ。

そうして、ベッドの中で、俺は自分への二つの制約を決めた。

一つは、夕枝が二十四歳になって、俺が時計塔の鬼でなくなるまでは、人間の俺は夕枝に会わない、ということ。

そしてもう一つは、夕枝と鬼の俺とが離れてしまった時、絶対に夕枝に会いに行こう、ということだった。