時計塔の鬼



「一つ、教えて?」


「……何を?」


「シュウは……今、人間なの?」



この質問をするのに、躊躇わなかったといえば嘘になる。

けれど、知りたかった。

シュウは今でも囚われの鬼なのか。

それとも、解放され、自由になったただのシュウなのか。



わずかな沈黙の中、私の全神経は耳に行ってしまっているんじゃないか、と思いそうになるくらい、私は耳をそばだてていた。

車のエンジン音と、どこか遠くで聞こえる車のクラクションの音。

そして、シュウの息遣い。






「人間だ。今の名前……いや、本当の名前は、杉浦秀っていうんだ」


「すぎうら、しゅう?」


「そ。詳しいことは、店で話すな」



ポンポンと、大人が子供にするように頭を撫でられ、私は渋々ながら、了承した。



そうして気がつくと、視界の先にはコアラの店の明かりがあり、近くの駐車スペースには坂田君の車がちょうど停められようとしていたところだった。

先に車から降りたらしい歩美が、こちらに向かって手を振っている。

私も軽く手を振り返し、シュウは苦笑いを浮かべていた。