時計塔の鬼



「夕枝」



前をボーッと眺めていると、右隣からシュウの声。

なんだか、少し低くなっているようにも思える。

勘違いだろうか。



「……何?」


「……いや、なんかちょっと、な。痩せた?」


「誰かさんがいきなり行方不明になってくれちゃったから、ね」


「……ゴメン」



私の嫌みに、シュウは素直に謝った。

前に向けていた視線を右隣の彼に向け直す。

シュウが今は運転のために前を見ているから、気恥しさは多少マシになっていた。



「言ったでしょ。もういいって。また会えたんだから、もういいよ」



私は、笑ってそう答えた。

そう。

シュウとまた会えた、ってことが私にとっては一番大切なこと。

嫌味を言ってしまった自分に、少しだけ後悔した。

シュウが、好き好んで会いに来なかった、とは思えない。

それならば、何か理由があったのだろう。

正当な理由さえ聞ければ、あとはただ、シュウとまた会えた、ということだけでいい。