時計塔の鬼



タバコの火を、携帯灰皿でもみ消したシュウは、私たちに向って、こいこいとでもいうように手招きした。

それに従い、シュウに近づく。



「久しぶり。夕枝にはもう言ったけど」


「久しぶり……って! あなた今までどこ行っていたのよ!? 夕枝がどれだけ心配してたと思ってるの!?」



歩美が、いきなりシュウに食ってかかった。

シュウは苦笑しながら、胸の前で手のひらを合わせ、視線を泳がせた。



「……それについては申し開きの仕様もない。とりあえず、俺腹減ってんだ。三人とも夕食まだだろ? どっかで食おうぜ」


「……それなら、コアラ行こうか」



坂田君が脱力したように提案すると、歩美は渋々と、シュウは喜々として、そして私は困惑しながら、四人で居酒屋・コアラまで向かった。






暗い夜道を、坂田君の紺色のセダンと、シュウの車であるらしい黒色のミニバンとが、それぞれを乗せて走る。

先導する坂田君たちの車を視界に収めながら、私はわずかにするタバコとシュウのものであるらしい爽やかな香水の匂いに、心臓をドキドキとさせていた。

それは抑えようとして抑えられる類の鼓動ではなく、なんとなく色っぽい香りに、シュウを横目で見るのが精一杯。

まともに見つめるのが、なんだかひどく気恥しく思えた。