時計塔の鬼



「あ、夕枝、休憩終わり?」



シュウをとりあえず学校から追い出して、私は職員室へと戻った。

シュウへの扱いがぞんざいであるのは、この一ヶ月、心配掛けられた続けたのだからまあ仕方のないことだ。



「歩美……」


「ちょ、夕枝、どうしたの? 顔色ちょっと変よ?」



おツボの目を気にしてか、歩美は小声でそう尋ねた。

坂田君まで私たちの方に椅子ごと体を向けて、「何?」と訊いて来た。

そんな二人の気遣いに、今さっきまでのことをかいつまんで教えようとしたのだけれど、混乱している私にそんな芸当はできるはずもなく――。



「シュウが、人間になってて、さっき、会いに来た」



それだけを、ポツリと言うことしかできなかった。



それから、案の定歩美は「えぇぇええ!」と叫ぶわ、坂田君まで「嘘だろ……?」と呆然とするわ、他の先生方から冷たい視線をびっしり浴びるわ、キラーンと三角眼鏡を光らせたおツボには長々と説教を食らうはめになるわで、散々だった。



そうして結局、なんとか今日中にしなければならない仕事だけをさっさと片付けたのは、シュウと別れてから約一時間半ほど経った頃。

歩美と坂田君とを引き連れて校門を出ると、道端でタバコをふかしていたシュウに、「よう、遅かったな」と手を振られた。