時計塔の鬼



「そういえば、田中君ね、謝ってくれたんだ。葉ちゃんとはぎくしゃくしてるみたいだけれど……反省してるなら、もういいかなって思う」



翌日に土下座しながら謝ってくれた田中君を思い出し、苦笑いが浮かぶ。

坂田君だけでなく、葉ちゃんや親御さんからも説教を受け、本当に反省をしていたようだった。

憔悴したような顔を、よく覚えている。



「シュウは甘いって言うのかな? 反省してないって言うかもね……。反省してるんだけどね」



反省していて、謝ってくれたのだから、私はもう許している。

ただ、愛情表現を間違ってしまっただけなのだ。

彼の次の恋が、願わくば穏やかで幸せなものでありますように。



夏の夕焼けは短く、夕立の後の綺麗な空気の向こうに見える朱色を、夜の熱帯夜への入り口のように見せる。

秋の夕焼けは長くて雄大で、そして鮮やかで艶やか。

冬の夕焼けは儚いように見えて、夜になることへの、どこか物悲しさを感じさせる。

春の夕焼けは、騒がしかった日中に穏やかに『お家に帰りなさい』と言っているようで、どこか安心する。

梅雨の夕焼けはたまにしか見れない分、空気が澄みきっていて綺麗に見える。



そんな梅雨と夏との間、どちらかといえば初夏の今。

私の目の前に広がっていた夕焼けは、昼間に雨が降っていたせいか、いつもよりも綺麗に見えた。

けれど、どこか空虚な感じがして、本当に美しいのかと問われて、頷く自信はない。



シュウ。

――帰って来て、欲しい。

消えたなんて、嘘だと言って欲しい。