時計塔の鬼



今まで、後頭部しか見えていなかった俺は、男の顔を見て、悟った。



あいつは、俺……だった。

今なら、名前もすんなりとわかる。

杉浦秀は、俺だった。

俺は、杉浦秀という人間だった……。



「あっれー? 何か居ると思ったんだけど……」



気のせいか、と呟いて、杉浦秀はまた俺に背を向けた。

俺からアイツを見ることは出来るが、アイツから俺を見ることは出来ないのだとわかった。



「可笑しなモノだな」



クスリと、自嘲が口元に刻まれたのが、自分でもわかった。

そう、おかしなものだ。

俺が、人間であったなどとは。



それからしばらく、俺はヤツ――といっても、過去の俺だが。

杉浦秀を観察することにした。



「んで、用って何? 大したことないならササッと帰りてぇんだけど?」



杉浦秀は、よく言えば自由人。

悪く言えば、自己中心的で奔放な人間。

良くも悪くもマイペースな人間だった。

己の言動が他者の神経を逆撫でしようとも、気を払わない。