時計塔の鬼



その言葉に、どれほど後悔したことか。

どれほど、胸打たれたことか。

夕枝。



『俺って幸せでもあるんだよな。……夕枝がここにいてくれるから。もう、それだけでいいや』


『私だって、そうだよ。シュウがいなきゃ、幸せなんてありえないもの』




なんて幸せな会話、幸せな時間だったんだろうな。

俺の幸せも喜びも、夕枝と共に居てこそ、感じられる。

他に何が必要だ?

他の、何が必要なんだ?






――ボコッ…

――ブクッ…


更なる記憶の泡が、上へ上へと、頂上を目指すかのように、上って行く。

より深く、深海の底へ向かう潜水艦にでも乗っているように、全ては巡っていく。



幸せな記憶。

幸せな感情。

幸せな日常。



だが……その前は?

夕枝と、出会う前の俺は?

さくらと出会う前の俺は?



なぜ、俺は鬼なのか。

なぜ、俺は鬼であるのか。

なぜ、俺は鬼であらねばならないのか。







なぜ俺は

鬼になったのか……?






謎は、更なる記憶の奥底に埋まる。