「おい、無視すんなよ」
黙ったままでいた私たちに、痺れを切らしたらしいシュウが拗ねた声を上げた。
さくらさんは、そんなシュウを見て、ニヤリと笑い――。
「……っ、見せつけんなっつの!」
再び私に抱き付いた。
シュウは焦ってるのか嫌がってるのか、慌ててこちらへ、私たちの所へやってくる。
ベリッと音がしそうなほどの勢いで、さくらさんが引き離された。
「あ~あ、夕枝ちゃーん」
「調子乗るな! おまけに夕枝を困らすな!」
「夕枝ちゃんは困ってへんしいいやん」
「眼科行け」
面前で、漫才かコントのような怒濤の会話が交わされる。
『……プッ……』
そうしてついに耐えきれなくなり、三人が、一斉に吹き出してしまった。
それにハッとしたシュウは苦笑いを浮かべているのに対して、さくらさんはニヤニヤ笑ってる。
さくらさんは確信犯かもしれないと思ったのは、私だけではないだろう。