時計塔の鬼


「え、どういうこと?」


「だから……っ」


「さくらさんって、事故に遭ったんじゃなったんですか?」



シュウが言うのを遮ってしまった。

何か物言いたげな視線が送られてきたけれど、今は無視を決め込んで、さくらさんを見る。

けれど、なぜか視線を逸らされた。

さくらさんの口元には、苦笑が浮かんでいた。



「んーと、うん、確かに事故には、遭ったで。十六年前やったっけ」


「……そうなの?」


「歩美、ちょっと黙ってて?」


「ん」


「……で?」



シュウの催促によって、さくらさんはにへらっと笑い、ようやく話すことを決めたようだった。



「うちが事故に遭ったのはもう知ってんねんな?」



シュウをちらりと見てから、さくらさんは私に尋ねた。

それにコクンと頷いて、話の続きを待つ。



「うん。なら話は早いわ」


「……」


「うちが事故に遭った後、東京の病院にいたねんかぁ」


「……それで?」


「そこにいためっちゃかっこええお医者さんに惚れちゃって、結婚して、みかんが生まれて、転勤で大阪に行ったねん」


『は……?』