――ガシッ…

「めっちゃ可愛いやん~!」


「い、痛い……で、す」



かすかな抗議の声を上げるものの、それが聞き入れられる様子はなく、ギリギリと抱きつかれた体制が続く。

ちらりと目だけで回りを確認すると、

シュウはあっけにとられたように突っ立っていて、みかんちゃんはそんなシュウを観察している。

歩美だけは溜息をついて、私からさくらさんを引き離してくれた。

助かった、というのが素直な感想だ。



「ちょっと~、歩美何すんのよー?」


「お姉ちゃんが夕枝を圧死させる前に助けたの!」


「うちそんなつもりとちゃうかってんもん」


「つもりじゃなくて、現実で考えてよ……」


「…………あっはは~」



乾いた笑いを浮かべるさくらさんを見て、シュウが「……諦めたな」と呟いた。



「で、なんでさくらがここにいるんだ?」



さくらさんが、乾いた笑いをやっと収めた頃。

シュウはそのまっすぐな瞳を、さくらさんに向けて言った。

……心の中が、少しザワザワしてしまうけどれど、今はそのことを表に出す時ではないような気がして、私は黙っていた。