―Side Shu―…

夢なのか?

これは、この今俺の目に映っているのは、白昼夢なんじゃないか?

だって、おかしいだろ?






あいつは…………さくらは――。



「さくらやで。鬼さん、久しぶり」



十六年前、俺の目の前で、死んだはずなのに。



あの日。

さくらの体は一度宙に投げ出されてから、二度、三度、地面に叩き付けられて、動かなくなった。

さくらを中心にして、道路には紅く生々しい水溜まりができていた。

緋黒く染まったさくらの服のシワまで……俺はしっかり覚えている。

今でも鮮明に甦る、鬼の悪夢のあの苦しみ。

それに……、あの後、連絡通路の所で話をしていた教師と呼ばれる種の人間たちは、“即死だった”と確かに話していた。

あれは間違った話だったのか……?



ふと、肩に温もりを感じて、手が乗せられたことに気付く。

振り向かなくてもその手が夕枝のものだとわかった。



「久しぶりだな、さくら」