時計塔の鬼



嫌な私……。

ドロドロした気持ちが私の内にある。



「夕枝、どうした?」


「え? ……な、なんでもないよ?」



横から腕が延ばされて、肩に回る。

温かさが、温もりが、心を溶かす。

ああ……すごい、シュウ。

さっきまで私を包んでいた嫉妬や不快感や自己嫌悪やらが、なくなった。

シュウは、すごい。

あっという間に、汚い私を綺麗にしてくれる。

まるで、シンデレラに魔法をかけた魔法使いのよう。






――チャラチャラリ~

突如、間の抜けた電子メロディが時計塔へと響き、反響して聞こえた。



「あ、ごめん。マナーにしてなかった……はいもしもしー」


「歩美ちゃん、それ授業中とかやったら危ないんちゃうん?」


「……危ないわよ」



電話を相手にする歩美を余所に、二人の話し声までもが、塔に反響していった。

シュウは無言だった。