ダメだ。

止まれ、止まれ。

ダメだ。

……無理なのか?

負の感情が意識よりも早く、俺の口を支配する。

だが――。



「邪魔なんっ……」


「シュウ、言いすぎだよ」



止めてくれたのは、ああ、やっぱり夕枝だった。

振り返った形で、俺の口をその小さな手のひらで覆って、俺の口を封じてくれた。



「夕枝……」


「心配してくれるのは、嬉しいけど……私はシュウに人を傷つけて欲しくない」



俺のことを考えてくれる言葉に、もうその小さな手の役目は終わりを告げていた。

俺が相手を傷つけるために言葉を使ったのとは反対に、夕枝は俺を止めるために自分の言葉を使った。

俺を止められるのは、夕枝が夕枝だからだ。



「……わかった」