―Side Shu―…

朝からずっと、嫌な予感がしてたんだ。

その嫌な感覚は、昼が過ぎて、夕暮れと呼ばれる頃合いになっても収まらなかった。

むしろ、増していった。





またいつもみたいに、時計塔の手すりに腰掛けて、周りを染めてゆく太陽……夕陽を眺めていたら、急な胸騒ぎが胸を襲った。

俺は何かに導かれるようにして、校舎の二階へと続く連絡通路へ近づいた。



「意味がわからないわ」



耳に、はっきりと跡を残す声。

聞き間違えるはずもない、夕枝の声。

だが……なんで、そんな、今にも泣き出しそうなんだ?

何にだ?

誰にだ?

夕枝……。

音の無い声で呟いて、さらに近づく。



「本当です。一目惚れして、目で追ってて、それでつい、いつの間にか……」


「そんで、気がついたらストーカーしてたっちゅうことなん? ……最低」



知らない声による会話。

その中に散らばる、気になるコトバ。

“一目惚れ”
“ストーカー”
“最低”


肩が震えて、握った拳に、爪が食い込んだ。

痛い、と思う感情さえ、どこかに吹き飛んでしまったかのようだ。

そっと夕枝の様子を見ると、唇をかみ締めているのか、肩がこわばっていた。

それを見て、さらに感情が膨れ上がったのを自覚する。



諦めたように頷いたまま、顔を上げようとしない男を、きつく見据えた。

お前か?

お前が、夕枝に何か……、ストーカーを、したのか?