時計塔の鬼



まるで、肉食獣が獲物を追い詰めた時にするような笑みだった。

自分が優位に立っていることを確信しているような笑みだった。



「……何をかしら?」



必死に、気丈な風を装った。

けれど、声が震えていては、台無しだった。

田中君の口元に浮かぶのは、依然として恐怖を感じさせる笑みだ。

その笑みが歪められた。

口が言葉を発したからだ。






「シュウっていう鬼についてですよ」



頭が重くなって、視界が暗くなって、世界の全てが色を失くしてしまったような……いろんな気持ちが混ざり合う。

恐怖。

予感していたこと。

脱力。

わからない。

怖い。

考えたくない。

なぜ?

嘘だと言って?

……なぜ?



いろんな気持ちが絡まり合う。



「な、何言ってるの? 鬼なんて想像上の生き物でしょ? ねえ、夕枝?」



答えらない。

わからないから。

どうして?

どうしてなんだろう?



無言のまま、視線が彷徨う。