「……みかんちゃん、お姉ちゃんはどこなの?」



歩美が、こめかみに指を当てて、みかんちゃんに尋ねた。

眉がおもしろおかしいほどに歪んでいる。

記念に写メっておくべきだろうか……。

いや、やめとこっ!

後が怖い。



「あ、お母さんは車止めてるはずやねんけどなぁ~。迷ってはるんちゃう?」


「はぁ……、やっぱり」



歩美がうなだれた瞬間、私の中の歩美のお姉さん像の要素に、方向音痴が加えられた。

とうとう歩美は座り込んで、携帯を取り出し、操作し出した。

けれど――。



『――ただいま、電話に出ることが出来ません。ピーという発信音の後に……』



電話口から漏れ聞こえてくるのは空しいアナウンスだけだった。



「んもうっ! 役にたたないんだからっ!」



歩美は悔しそうに、曲がっていた眉をさらに歪めて、携帯を強く握り締めた。



「ダメだったんだ?」


「うん……。もう、みかんちゃん一人は危ないよね?」


「でもみかんはもう中二だろ?」


「まだ十分危ないわよ!」