「あ……あは?」
「あは? じゃないわよー! 後で片付けてあげるから、とりあえず冷めないうちにご飯食べよ!」
歩美を相手にとると、誤魔化しもきかない。
この歩美の迫力の前では「はーい!」という返事しかできなかった。
キッチンスペースに椅子を二脚持ち込む。
歩美曰く、あんな部屋で食べたら味がしない、だそうだ。
「ご飯何作ったの?」
「野菜炒めとお味噌汁とハンバーグ」
「歩美のハンバーグって美味しいから好き!」
後は、出し巻き卵もおいしい。
歩美は、当たり前でしょ、と胸を張った。
「家庭料理はね、女の武器なのよ?」
「そ、そうなの?」
「そうなの。よく、お袋の味って聞くでしょ? あれが食べたいらしいのよねー」
歩美が頬を染めるものだから、誰のことを思いながら言っているのか。
すぐに、わかった。
「坂田君が?」
「まあ、慎ちゃんもそうだけど。でも慎ちゃん情報だと、だいたいの男はそうらしいよ?」
「へぇー」