時計塔の鬼



「震えは収まってきたみたいなんで。……はい。タクシー呼んでおきます。はい。先生も気をつけて」



葉平の歩美への通話で、体を震わせていたものが収まっていたのを知る。



シュウ――。

名前だけでも、私にとって、あなたはお守りよりも強い安心を与えてくれるんだ……。

シュウがもたらす自分への影響の大きさに、驚いて……安心した。

いつの間にか――震えは完全に止まっていた。



「夕枝姉ちゃん、井上先生呼んだから……」


「夕枝ぇーっ!!」


「…………」



葉平の声を遮るように、私の名前を叫びながら歩美がコンビニに駆け込んできた。

このコンビニの店長さん。

大声出してごめんなさい。



「あゆ、み……?」


「夕枝、大丈夫ッ!? 家に帰ろう? 今夜は私も夕枝の部屋に泊まるからねっ!」


「……つか、井上先生やけに早くないスか?」



確かにそうかもしれない。

気心の知れた親友の出現にまた涙が零れそうになって……堪え切れなかった。



――ポタッ…

「歩美……ありがと……」