時計塔の鬼



「夕枝姉ちゃん……!? 何があった!?」


「ぁぁあぁああぁああ!!」



心が、悲鳴をあげた。


怖かった。

怖かった。

……本当に、怖くて怖くて、仕方がなかった。



『ちょっ、夕枝! 夕枝!』



携帯電話から流れる歩美の声に引かれて、葉平がそれを取った。



「もしもし……井上先生?」


『え、沖田君? 夕枝は!? 夕枝は無事なの!? ていうか、あなたたち今どこにいるの!?』


「コンビニです。場所は……」



頭を抱えてしゃがみこんだ形の私の背を、ゆっくりと葉平の手が撫でる。

けれど、震えは一向に収まらない。



シュウ……っ。

シュウ……。

シュウ。



おまじないのように。

ただただ、シュウの名前を何度も何度も繰り返し、心の中で唱えた。

安心を得るかのように。

ただただ、恋しい鬼の名を繰り返す。