時計塔の鬼


「キャーッ! キャーッ!!」



叫びながら、足を必死に動かす。

もつれそう。

だめだ。

転びそう。

だめ。

早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く……。

人の、いる所へ。



「見えた……っ!」



夜の断続的な闇の中、一際大きく、輝く星のように。

地上での、大きな光を放つ……コンビニ。

一気に、駆け込んだ。






――ガタッ…

「ゆ、夕枝姉ちゃん、どうしたの!?」



中では、商品整理でもしていたのだろう葉平が、抱えていたダンボールを床に乱暴に置いた所だった。

人が、信頼できる人が、側に居る。



「……た、すけて」



頬に、濡れた感触があるのを、言葉を発して初めて知った。