―Side Shu―…


タッタッ……と夕枝が急ぎ足で階段を駆け降りて行く音がやけに大きく響く。



「……はぁ」



口から、出したくもない溜め息が零れ出る。

夕枝に、気付かれてしまったのか……?

それだけはダメだって、さっき考えたばかりじゃねぇか。

……俺の、バカヤロウ。

溜め息を吐き、荒々しい仕草で額を拭った。

夕枝に見られるわけじゃないなら、気なんて使う必要はない。

袖には湿った感触があった。

気付けば、冷や汗が出ていた。



夕枝がポツリと残していった言葉が、何度も何度もリピートされる。

繰り返されて、頭に染み込んでいく。



『シュウに関係ないなんて……言われたくなかった』



俺は傷付けてしまったんだろうと思う。

“関係ない”なんて、拒絶と同じだ。

夕枝を傷付けた。

だが……、この時計塔にこれ以上長く夕枝をとどめていたら、もっと悪いことが起こりそうな気がしたんだ。

こんなことは、ただの言い訳にしかならないだろうが。

俺の謎の激痛のことを話せば、夕枝は心底心配するだろう。

それこそ、塔に泊まるともまで言いかねないほどに。

俺は、それが怖いんだ。