「あったよっ! ……わからないのっ!?」
服の裾を掴んで、引き寄せようとする。
けれど、上手くはいかない。
それがまた、声にも苛立ちを表す。
ガクガクと揺さぶって、少しでもその苛立ちを抑えようとする。
……わかってる。
こんなの、ただの八つ当たりだって。
仕事の疲れとか、毎日の不安とかで、いっぱいいっぱいになってる。
自分でも止められないほどにまで膨れ上がってる。
それは、大きな不安も小さな不安も全部一緒にさせて捌け口を求めてるんだ。
座っているとコンクリートの上に微かな煌めきが見えた。
いつの間にか、辺りは夜の雰囲気に包まれてしまってる。
「なんで、倒れてたの……?」
見つめるけれど、シュウは口を開こうとしない。
さらに強く引っ張りながら、半ば叫ぶように言う。
「なんで言わないの!? 本当にすごく心配して……っ!」
「そっか。ごめんな? 寝てただけなんだ」
嘘だ。
シュウに嘘をつかれたこと。
それは、思わぬ衝撃だった。
「ごめんなじゃなくて……、なんで嘘つくの!? 違うよね?」


