時計塔の鬼



けれども、口から零れ落ちたその名前に、体が凍り付いてしまったように感じた。

さくら……さん?

高校生の時、シュウと出会って間もない頃に聞いた話の、もう一人の主人公。

関西弁の元気な女の子で、シュウに名前をあげた人。

“囚”をあげた人だ。






「シュウ……?!」


「ん……ぁ、夕枝?」



大きくあげてしまった声に反応を返したシュウは、私をボーッと見て、いつものように、微笑んで私の名を呼んだ。

その通りだよ。

そうだよ、シュウ。

私は夕枝だよ。

死んだり、しないよ?

そっと、心の中で語りかけた。

胸がギュッと締め付けられたような感覚には、キツク蓋をして、無視した。



「シュウ……?」



名前だけを、そっと声に出して呟く。

すると、目に見えてシュウの瞳に光が宿った。



「! ……って、夕枝?!」


「そうだけど……」