時計塔の鬼



心臓が止まるなんて、そんな生易しいものじゃない。



私のからだのすべてが、意味をなくして。

私の存在自体も、意味をなくして。

すべてのものが、意味をなくして。

世界がみんな色も存在も、意味もなくす。

なくなりつくす。



目を奪われた。

夜風にさらされて冷たいであろうコンクリートに横たわる、美しい鬼の姿。

それはただそれだけで完璧で、まるで一服の絵のようにすべてが整ってる。

だけど、それではダメ。

生きていなくては、意味がない。

シュウが鬼でも異形でも関係はないけれど、生きていなくてはやっぱり、意味がない。



「シュウ……っ?!」



駆け寄ろうとすると足がもつれた。

こんな時に、と自分を呪いたくなる。

シュウッッ!

心の中で、何度も何度も彼の名前を叫びながら必死で足を動かした。

そして、やっとシュウの傍に膝をつけた。

否、膝から崩れ落ちた。



シュウ……。



ゆっくりと、触れる。