時計塔の鬼



「夕枝、謝んなよ」


「……ん」



背中に感じていた温もりが、前に回って、顔面にシュウの鼓動を感じた。

シュウ……。

生きてるよ。

鬼だけど、シュウはちゃんと、生きて、ここにいる。



そのまま、唇にも温もりを感じる。



「……んッ」



温かいだけじゃなく、熱を伴って、シュウの存在を感じる。

幸せに、包まれる。



「……何か変わったこととかなかったか?」


「ないない。大丈夫だって。シュウは心配しすぎ」


「夕枝は警戒心がなさすぎ」


そう言って笑い合う、はずだった。

いつものように――。






けれど、今日。

時計塔に上がった私の目に飛び込んで来たのは……倒れたシュウの姿だった。