時計塔の鬼



最近、葉平と一緒によく質問に来て、気疲れさせる人物。

確認をしたのは、一度、職員室前の廊下を出た所でだけ。

びっくりの気持ちが大きくて、心臓は激しく働いてる。

冷や汗が背中を辿ったようだ。



「どうしたんスか、沖田先生? あんな早足で……」


「んー……、ちょっと用事でね」



苦笑いでなんとか誤魔化そうとしてみる。

けれど、効果があったかどうかはわからない。

その証拠に、今、田中君が何を考えてるのか、サッパリわからない。

それが、少し怖い。

……だめだ。

相手は、生徒なのに。

怖いなんて、思ってはいけない。



けれど、シュウのことを知られるわけにはいかない。

それだけを心に落ち着ける。

すると、スッと冷静さが戻ってきた。



「田中君こそ、どうしてこんな所にいるの? 部活は終わってるでしょう?」



勉強を教える中での雑談で、彼が卓球部に所属していることは聞いている。

けど、今の時間は下校時間の寸前。

実際に、田中君はジャージではなく学ランを着ている。

では、なぜ?

そんな疑問が絶え間なく、浮かんでは、消える。