時計塔の鬼


「あのさぁ、沖田さんと坂田って仲良いよねぇ?」



先ほどアリサと呼ばれていた一番背の高い子が口を開いた。

巻かれた髪がその細い指に絡み付いている。


坂田君というのは、隣りの席の男子のこと。



「そう?」


「絶対そうだってぇ」


「仲良過ぎじゃあん?」



口々に言われるので、口を挟むのをためらってしまう。


目の前の彼女たちにわからないように、そっと溜め息を吐く。



これだから苦手だ。

絶対だと思うなら、わざわざ聞かなければいいのに。



あいにく、坂田君に特別な感情なんて持っていない。


何を勘違いしてるんだか。



再び小さな溜め息をそっと吐いて、心の中で毒づいた。