時計塔の鬼



「草野先生にはそれは関係ありませんよね?」



にっこり笑って、恐ろしく低い声で凄んでみせた。

多少顔が引きつってしまったのはご愛嬌だ。

普段大人しくしてる私しか知らないためか、中年教師は「ヒィっ」と、なんとも情けない引きつった声をあげた。

その様子を見て、少しは溜飲が下がったものの苛立ちは残っている。

それが、それが私に追い討ちをかけさせる。



「草野先生、今の発言はセクハラになりますよ?」



その言葉に、中年言葉的セクハラ男・草野先生はギクリと体を強張らせたようだった。

口元が歪んでいるのを自分でも自覚しながら、私は思いっきり“作り物っぽい”笑顔で口を開いた。



「以後、気をつけてくださいね」



そこでやっと中年教師は自分の失言に気付いたらしい。

ガマガエル並みの汗を吹き出させ、しどろもどろになった。

そして、「す、すまんねっ。そんなつもりじゃなかったんだが……っ」と焦り出した。



いい年した大人が焦るのを見て“今さら何を”という思いが胸中を占める。

目は言葉よりも雄弁とはよく言ったものだけど。




中年教師は私にまた顔を向けた。

かと思うと、「で、ではな……っ」と一言残してその場から逃げ出した。

その声があまりに震えていて、姿が見えなくなった途端に吹き出したのは言うまでもない。