時計塔の鬼


その言葉で、あぁと納得した。

大阪に住んでるらしい、歩美のお姉さんの話は時々耳に挟む。

何でも、昔から口論して負けたことがないとか。

可愛い子供が居るとか。

結構放任主義だとか。

旦那さんを尻に敷きまくっているだとか。






目をつけられないように静かに職員室のドアを横に引いた。

特に誰も目を向けなくて少しホッとし、席に着く。



「はい」


「ありがと」



コトンとデスクになみなみと中身の入ったカップが置かれた。

歩美が持ってきたのはブラックコーヒー。

しかも、ちろちろと白いのが立ち上がっている、ホットを。

もうすぐ暑くなる季節だというのに、そんなことはお構いなしなのだ。

当の歩美は、「やっぱりブラックは目が覚めるわよねー」なんて零しながら中身をすすっている。

隣の椅子を堂々と使っている所を見ると、そこが坂田君の席だと知っていてやっているようだ。



もう一口、コーヒーを飲んで歩美は再び口を開いた。



「でね、お姉ちゃんに夕枝のこととか、慎ちゃんのこととか話してたの」


「へぇ~、それで?」


「うん。それでね、よかったら会ってあげてくれない?」