時計塔の鬼



高校生に張り合う必要なんてないような気がする。

けれど、歩美には黙っておくことにした。

言うと面倒になるのは目に見えていたということもある。

それに、わざわざ化粧し直してくれたということもあった。

“武士の情け”ってヤツなのだろうか。

こんなことシュウに言ったら、『いやいや、武士じゃないから』って突っ込んでくるだろう。






「あっ! 夕枝」



私の思考を歩美の声が打ち切り、意識を現実に引き戻す。



「何? まだ何かあるの?」


「うん……」



呼び止めたと思ったら、歩美は口ごもった。

そして、なかなか口を開こうとしない。

その様子は“何かある”、もしくは“あった”と私に悟らせる。



なんとなくだけれど、良い予感がした。

そして、それは的中した。