―Side Shu―…


ああ……まただ。

また、この夢だ。






網膜の中に朱が零れているかのように、紅い。

紅い水だ。

それが今、俺の視界に紅いフィルターをかけている。

夕焼けの赤なんて、生易しいものじゃない。

それはそう、まるで……心臓から零れたかのような、深紅。



『シュウ。あたしね、転勤することになったんだ』



目の前に突如として現れた夕枝は、苦笑しながら俺にそう告げた。

夕枝……?

待てよ。

なんだよ、それ。

引き留めようと、手を伸ばす。

だが、届くと思って伸ばされた腕は、宙を掻き、夕枝には届かなかった。



『シュウと離れるのは寂しいけど仕方ないよね!』



夕枝は……笑っていた。

その笑顔は、無理をしていることがバレバレな、下手くそなモノだった。

力なく笑うなよ。

切なく笑うんじゃねぇよ……。

俺だって寂しいって……言えなくなっちまうだろ?