「そしてね、慎ちゃんったら、デレデレしちゃってーっ! もう、何なのよアイツー!」



ムキーッ! とばかりにウィンナーを箸でつつく歩美。

普段の天然ぶりはどこへ行ったんだろう……。

まあ、そんな歩美も可愛いのだけれど。

ふぅ、と溜め息を零して、あまりに可哀相な坂田君の弁護に向かうことにした。



「坂田君は男子からも人気じゃない。というか、歩美も男子からはかなり人気あるでしょ?」


「ううぅ~っ!」



突っ込まれたくなかったところだったらしい。

奇声を発して、歩美は黙り込んだ。

歩美は悔しそうに、ブスブスと空気穴がたくさん開いたタコさんウインナーを噛んでいる。

恥ずかしさか悔しさか、上気した顔を見せる歩美は女の私からでもすごく可愛いくみえる。



歩美の可愛らしさのせめて十分の一でも、私にあったらよかったのに、なぁ。



ふとした瞬間にそう思うことを止められない。

いつからだろう。

……歩美と出会った時からかもしれない。

あまりにも頻繁に訪れる思惟に、思わずそんな結論を出してしまう。



それほど、歩美は可愛らしく、私は可愛げがない。

シュウは“可愛い”と連呼するけれど、それはほぼ間違いなく、それは“恋の欲目”だと思う。

世間一般から見れば、私はやはり可愛げがない。