「夕枝」
ゾクリとした。
今更だけれど、シュウの程よく低い声は私の耳の中を転がり、全身に甘い震えをもたらすんだ。
「降りよ」
「ん」
短い返答。
シュウの腕を貸してもらい、私は手すりから降りた。
「ありがと」
「ん」
シュウも、短い答えを返した。
手すりから降りた私たちは、すぐその場にしゃがみ込む。
ここは風が避けて通ってくれる、絶好の場所。
そこで、私は今日あったことをおもしろおかしくシュウに話す。
シュウはそれを興味深そうに聴いてくれる。
“夕枝がいないと、いつも代わり映えのない、暇で仕方がない生活なんだ”
彼がそう愚痴を零したのはいつのことだっただろう。
そうして、私が今日の話をしていた時だった。


