時計塔の鬼



「ゆーえっ!」



ポンッと肩を叩かれるまで、後ろに歩美が来ていたことに気付かなかった。

驚かされた自分に苦笑しながら、歩美の方へと向き直る。



「あ、歩美。どうしたの?」


「別にー? 夕枝がボーってしてたからだよ~」


「そっか」



私は言うことが見つからなくて、それきり黙ってしまった。

視線の先には、時計塔。

無意識のうちに時計塔を、シュウを、探し求めている自分に気付き、再び苦笑いした。



「あの建物って、時計塔だよね?」



歩美が私の視線に気付いて、話を振って来る。



「うん、そう。……時計塔だよ」



自分に言い聞かせるように、繰り返した。

時計塔、と。