新入生の退場によって、喧騒が大きくなった。
二階になんて、誰も注意を向けていないだろう。
そして、誰も見ていないのをいいことに、思い切り体を伸ばした。
が――。
「~んん……っ」
――バキッ
――ボキッ
……また、すごい音が聞こえたような気がした。
いや、気のせいなんかではないんだけれど、ちょっとその事実を認めたくはない。
高校生の時から、体の硬さには呆れてたけれど……ここまで来るともう年かもしれない。
改めて自分の歳を実感し、ちょっと悲しくなった。
「夕枝ー!」
階下から声が聞こえた。
次いで階段を上がってくる足音が聞こえ、声の主が姿を現した。
駆け上がって来たためか、癖があるチョコレートブラウンの髪が、彼女の首筋で跳ねる。
「もー、やっと終わったよ~。式ダルいね~」
頬に流れた自分の黒髪を耳にかける。
あまりに素直な親友の予想通りの感想に、思わず苦笑が浮かぶ。
「仕方ないでしょ? 歩美は新任なんだから、下にいなくちゃいけないし」