時計塔の鬼



「で、明日から冬休みなワケだけど」


「それで?」



冷たい風の吹き荒ぶ時計塔の手すりに体をもたれ掛けさせてそう話を振ると、シュウは怪訝そうに眉をひそめた。

それを視界の隅で捕らえつつも、私はぞろぞろと帰っていく制服の群れに視線を向けていた。

どの人も二週間ほど先の学校生活の再開よりも、目先のクリスマスやお正月に意識が向けられているのは明らかで、とても明るい顔をしている。



「しばらくお別れってこと」


「…………」


「そんな子犬みたいな目をしても駄目だからね」


「……犬じゃねぇし」



ぷいっとそっぽを向いたシュウは、犬そのものじゃないか、と内心で思う。


私だって、クリスマスやお正月が楽しみじゃないわけでは決してない。

むしろ、心待ちにもしている。

けれど、冬休み期間中は、シュウとは会えない。

その事実が、少しばかり私の意識を重くさせていた。