「マジごめんね、せっかく勇気出してここまで来たのに」
なんて優しい先輩なんだろう。
この人、絶対モテる。
必死に謝る先輩を見て、『いえ、あたしこそすみません』と、真由が笑顔で答える。
「でも、俺嬉しいよ。
真由ちゃんが真剣に取り組んでくれて。頑張ってね」
そう言って、真由の肩をポンポンと叩いた。
一気に赤くなる真由を見て、あたしまでつられて赤くなってしまう。
真由は、３年生の廊下を全力で走っていた。
その後を、あたしも全力で追い掛ける。
「莉奈、あたし完璧ヤバい。
完全にノックアウトだ」
教室に滑り込んだ真由が、あたしを振り返る。
その表情は今にもニヤけそうで、幸せな空気が漂っていた。
「あたし、部活も恋も本気でがんばるね。
莉奈、協力してくれる？」
ピンク色に染まる真由を見ていると、断る理由なんてないよね。
あたしは、もちろん『うん』と、大きく頷いた。
