――ガタンっ!
沈黙を破る突然の音。
驚きのあまり、あたしは息を飲み込んだ。
あたしの前に座っていた蔵島恭平がいきなり立ち上がり、教壇へと向かった。
突然の事に、体が硬直する。
蔵島恭平は何をするんだろうと、瞬きが多くなった目をぱちくりさせて見ていた。
そして、あたしはさらに目を見開く。
教壇へと歩いて行った蔵島恭平が、大量に重ねてあるプリントを手に取り机に並べていく。
まさか、こいつが本当に作業をするなんて――。
驚いた。
恐る恐る立ち上がり、プリントを並べる蔵島恭平に近づく。
「あ、あの……」
蚊の鳴くような声しか出せない。
蔵島恭平はそんなあたしを気にもとめずに、並べたプリントを一枚一枚ホチキスで留めていく。
どうしたらいいのかわからず、唇を噛み締めながら俯くと、彼の作業の手がピタリと止まった。
「早く帰りてぇんだけど」
初めて聞く、彼の低い声。
思わず怯んでしまう。
ビクッと肩を震わせ、目だけで彼の表情を確認した。
声でもわかるように、かなり機嫌の悪そうな顔。
早くしろよと言わんばかりに、あたしを睨んでくる。
「ご、ごめん……」
震える手がバレないように、プリントをしっかり掴んだ。