これは、現実?
 

目の前で涙を流す恭平は、実は偽物だったりしないの?
 

目が覚めたら、実は今までの事は全て夢でした、とか……。


そんなオチじゃないの?
 

いろんな考えが入り混じって、あたしの瞳から溢れるこの涙は弱まることはなかった。
 

だってね――。
 

あたしが抱きしめる恭平は、物凄く暖かいんだ。
 

きつく抱きしめると鼓動の音も聞こえて、恭平は確実に生きてるんだって証が、あたしの体に直接伝わってくる。
 

こんな感情、夢なんかじゃない。


明らかに現実で、もう逃げる事なんてできないんだ。
 

あたしは、恭平から体を離して真っ直ぐに目を見た。


「恭平、一緒に闘おう」
 

涙を拭いながら、強く言った。
 

このまま悔み続けて涙を流していても、仕方がない。
 

辛すぎる現実だけど、闘って生きていくしかない。


「あたしが、ずっと傍にいるから」

「……っ」
 

恭平は、また涙を流した。
 

今度は、きつくあたしを抱きしめながら。
 

学園祭で盛り上がる生徒の中で、あたし達は屋上のこの階段で、強く抱きしめあった。
 

絶対に離れないと誓った。
 

あと半年、今までにないくらい濃い時間を過ごして行こう。
 

一緒に、たくさんの思い出を作る。