「恭ちゃんだって、パパとママに戻ってきてほしいんでしょ?
寂しいんでしょ?」
優斗君の瞳には、大粒の涙がたまっている。
「……いや」
恭平は少しの間を開けて、二人の体を自分の方に向けていた。
「寂しくないよ」
「なんでっ?」
「俺には、家族がいるから」
「………」
「優斗も美穂も大ちゃんも。
あの家に帰ったらみーんながいる。
毎日楽しいだろ?いっぱい遊んで、いっぱい笑って、いっぱいお話して」
恭平は、きつく二人を抱き締めた。
「おまえらには、ちゃーんと家族がいるじゃん。
俺も大ちゃんも、二人の事が大好きなんだ。
パパとママがいないのは、確かに寂しいよな……。
みんなが、羨ましいよな」
恭平が二人の耳元で言うと、二人は鼻をすすりながら何度も頷いていた。
「だけど、大ちゃんは、俺らを育ててくれようと必死になってくれてるんだよ。
おまえらも、大ちゃんに笑顔もらってるだろ?」
「うん――」
「本当のパパじゃないけど、一生懸命、俺らのパパになろうとしてくれてる。
だろ?」
「うん――」
また二人の瞳から、大粒の涙がコロコロ転がった。
「パパとママはいないけど、みんなで助け合って行こうよ。
なっ?」
恭平が二人の顔を覗き込むと、二人は涙を拭いながら深く頷いた。
「ほらっ、泣きやめ。そんな泣いてばっかだと、大ちゃんに笑われるぞ」
「うん」
二人は唇を噛み締めて、真っ直ぐに恭平の目を見ていた。
やっぱり、恭平はすごいよ。
立派なお兄ちゃんだ。
優斗君も美穂ちゃんも恭平に抱きついて、やっと、頬笑みを見せた。
小さな頬をぷるんと上げて、恭平に頬ずりをする。
あたしも涙を拭い、三人の元に足を進めた。
すると、優斗君と美穂ちゃんがあたしに抱きつき、『大好き』と言ってきた。
とても温かかった。


