ひまわり



「あいつら……」


画用紙を持つ恭平の手が、震えていた。


「いつから……」

我慢していたのか……。


そう呟く恭平の声は、やっとであたしの耳の鼓膜を刺激した。


「なんで、なにも言わねぇんだよ」


恭平が声を絞り出すと、画用紙に小さなシミを作った。
 

クレヨンで描かれた絵には、所々滲んでいる箇所がある。
 

あの子たち――…。
 

画用紙に描かれていたのは、家族だった。
 

四人で手をつないで、小さな優斗君と美穂ちゃんは、顔いっぱいで笑っていた。


太陽も笑って、雲も笑って、空も笑って――。


ただ、大人の二人だけは、顔が描かれていなかった。

 
顔全体を肌色で塗りつぶしてあり、女性の顔の辺りにポツリ、男性の顔の辺りにポツリと、丸く歪んだシミがあった。
 

どんな気持ちで、この絵を描いていたのか……。
 

考えただけで、切なくて、やるせなくて。
 

天井を見上げて涙を堪えると、鼻の奥がつんと痛くなった。