「あのさ」
「うん?」
「ずっと疑問に思ってたんだけどさ」
「あぁ」
「大ちゃんって、奥さんいないの?」
あたしがココアの表面をクルクル混ぜながら聞くと、恭平はうんと大きく頷いた。
一人で子供を預かって育てているなんて、大変そう。
いい人、いないのかな。
「あいつが全部一人でやってるよ。
家事は優斗と美穂とみんなで分担してやってるけど、大変だと思う」
恭平も、ココアを混ぜていた。
「前にさ、俺言ったんだ。
高校に入ったらバイトするって。あの中で働けるのって俺だけじゃん?
あいつの負担を減らせるのも俺だけだし。少しは力になれるかと思ってさ」
「うん、そだね」
「だけど、俺がそう言ったら、あいついきなりキレやがってさ。
マジ意味わかんねぇ」
恭平は眉間にしわを寄せながら、首を傾げた。
ふと、店内の静かな音楽に交じって、ハイテンポな明らかに場違いな音楽が聞こえてきた。
恭平がポケットを探ってそれを取り出すと、ワッと音楽が大きくなる。


