恭平が診察室に入って行ってから、しばらく雑誌をめくっていた。


あたし達の年代が楽しめそうな雑誌なんてなく、普段絶対に読まない経済のページを開いてみる。


わけのわからない言葉が並ぶ。


言葉っていうか、暗号……?


あっ……、ヤバい……。


睡魔が……。


ブンブンと、眠気を振り払う為に頭を激しく横に振る。


やっぱ、ダメだ。


もっと、おもしろい雑誌ないのかな――。


あたしは席を立ち、小さな本棚へと向かった。


本棚の中から、少しでも時間の潰せるような雑誌を選び手に取った。



その時――。


ふと隣を見ると、小さな男の子が、椅子の上からあたしを見ていた。


ううん。


見ていたという表現はおかしいかもしれない。


実際には、小さな男の子が、あたしの方に体を向けてた、だ。


男の子は、お母さんの隣で必死に手足を動かして一人で遊んでいるようだった。