額から流れる汗を拭いながら、うるさい蝉の居場所を探すと、ジジっと羽を震わせて別の木へと飛んで行った。
「早くお水あげなきゃ。
きっと、喉乾いてるよ」
「そだな」
あたしは近くの水道で水をくみ、恭平は枯れてしまったお花を処理する。
「こんなになるまでほっといててごめんな。いっぱい水飲め」
そう言って、彼はお墓にたくさんの水をかけてあげていた。
この日差しの強い真夏の一か月は、かなり長かったよね。
たくさん、水を飲んでください。
あたしも、きれいなお水をお供えした。
恭平は、紙袋から先ほど買ったガーベラを取り出し、丁寧に花瓶にさしていく。
みるみるうちにきれいになっていくお墓に、恭平の両親も喜んでくれているような気がした。
最後に線香をあげ、手を合わせる。
「今日は何を話したの?」
「んなの普通だよ。楽しくやってるよとか、そんな感じ」
そう言う彼の横顔は、どこか照れていた。
みずみずしくなったお墓を見て、口角をあげる。
こんなもんか、と満足する彼が、隣のあたしを見下ろした。


