早速興奮気味に言うあたしの隣で、彼は頭をかいている。
相変わらずのあたしは、キラキラと目を輝かせ、彼が答えるのを待っていた。
だけど、いくら答えを待っても彼が答える気配はなかった。
頭をかいた後に鼻をかいて。
前髪をいじった後に、また鼻をかいて。
首を傾げながら、なにやら言葉を探っているような感じだった。
彼の言葉を待っている間に、雨の激しさが増したらしい。
鉄のドアに打ち付ける音が大きくなっていた。
「あぁ……その話さ、また今度でいい?」
「やだ」
少し話しにくそうに言う彼に即答する。
今すぐ知りたい。
今すぐ確認しなきゃ落ち着かない。
また、あたしの悪い癖が……。
時と場合を考えられない、あたしの悪い癖。
「前……やってたから」
彼がぽつりと話しだす。
その小さな声は、下の階から聞こえてくる騒がしい声に掻き消されそうだった。
「前って?」
「ガキの頃。 野球が大好きだった親父に習ってた」


