「ううん。してないよ」
「………」
「部活、中学の時はなんにもしてなかった」
真由があたしの心を読み取った。
かなり驚いたけど、それよりもあいつがあんなに速い球を投げられる事の方が驚きだ。
なんで――?
さっきから、この言葉があたしの中をグルグル回ってる。
彼の事を1つ知っていけば、また1つ疑問が生まれる。
気がつけば、あたしはもう、あいつから目が離せなくなっていた。
じーっ――。
昼休み。
あたしは、教室で携帯をいじっている彼の背中に熱い視線を送っていた。
また疑問を持ってしまったからには、すぐに調査したくてウズウズする。
だから、早くこっちを振り向けと、さっきから念を送ってるの。
なんで同じクラスなのに、堂々と話せないのか。
かなり歯痒い。
噂の馬鹿野郎と、ものすごい形相で睨んだ。
その時。
彼が身震いして、辺りを見渡し始めた。
そう、そのまま、こっちを向け。
更に念じると、ようやく後ろを振り返り、あたしの方に目を向けてくれた。
そして、彼が肩をビクつかせる。
あたしの不適な笑みに、鳥肌を立ててくれたみたいだ。
彼が目を向けているうちに、『屋上』と素早く口パクする。
一瞬、眉を潜めた彼だったけど、あたしが席を立った瞬間になんとか理解してくれたみたいだった。


